ガリレオ温度計について考える
今年の夏前に買った「ガリレオ温度計」というものです。安かったのでつい買ってしまいました。安物買いの銭失い、を地で行くおじさんです。中に液体と、金属板のついたガラス球が入っていて、温度に応じてそのガラス球が浮き沈みします。買った時はもう十分に暑くて、液体の密度が小さくなり、すべての球が沈んでいました。日本の夏では温度計としての働きができないのだな、と見ていましたが、10月に入って、ガラス球が浮き始めました。中の液体の密度が大きくなってきたのです。
一番密度の小さい球が浮く時が26℃、一番密度の大きな球が浮く時が18℃、と設定されています。球は5個。この写真では、3つ浮いて、2つ沈んでいますので、22℃くらいであることが分かります。
●さて、この液体は何でしょう?ネットで検索したら、下のような情報がありました。
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材質:
ガラス素材 硬質ガラス=耐熱ガラス
円筒内の液体 パラフィンオイル
ガラス球内の液体 アルコール(工業用アルカリ性色素入り)
タグプレート・リング 真鍮
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ほかにも、「本体及び球体内部液体 / LIGHT PARAFFIN OIL」と表示したものもありました。
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ネット上では他に、ジエチルエーテル、水、ペンタン、アセトン、流動パラフィン、エタノールなどが候補として上がっていました。
私の買った商品の箱に書いてあった説明では「The liquid in the cylinder is free of CF2 gases, neither poisonous nor does it cause any vapor or gas injurious to health.」としか書いてありません。訳すと「円筒の中の液体はCF2を含みませんし、有毒でもありませんし、健康に危害をもたらす蒸気も気体も発生させません。」こんなところでしょうか。
「CF2」がよく分かりません。「フロン」なら「クロロフルオロカーボン」で「CFC」と呼ばれることが多いのです。ひょっとすると「テフロン・モノマー」、つまり「テトラフルオロエチレン」「CF2=CF2」のことかもしれません。C2F4が分子式ですが、組成式にしますとCF2ですから。
水が一番安全ですが、ちょっと膨張率が小さすぎるような気がします。おじさんが想像するにやはり流動パラフィンでしょう。これなら、ガラス管が割れたときの危険度で水以外では一番安全でしょう。蒸気が上がってくることもないし、可燃性も低い。火をつければ燃えますが、引火はしにくいでしょう。他の液体はみな蒸発しやすくてしかも引火性があって危険です。
流動パラフィンは、ベビーオイルにも使われています。「肌に良い」とかいうのではなくて、「肌に無害」なのです。化学的性質が安定していて日光や酸素で変質しにくいのです。「ベビーオイルが石油製品だったなんてショックだ」という書き込みも見かけましたが、「石油は悪、天然は善」というのは丸っきり100%の嘘っぱちですから信じないで下さい。(サメのオイル「スクワラン」などは酸素で変性しやすいですから、封を切ったら要注意なんですよ。すぐ劣化して肌に「悪く」なります。)
「ものの性質はものに訊く」しかありません。
★ところで、このガリレオ温度計が、気温に応じて球が浮沈して温度を知らせることができるということの原理を確認しておきたいと思います。
今「浮沈」という言葉を使いましたが、「浮沈子」とは違います。
●浮沈子の装置はおおよそ下のようなものです。密閉された容器の中に水が入っていて、その水の中に、空気の入った小容器が逆さまに浮いています。(容器はペットボトルでも構いません。小容器はガラス管でもいいし、しょうゆ差しのプラスチック容器でもいいです。)空気が押しのけた水の体積に等しい大きさの上向きの浮力が、小容器の下向きの重さとつりあって、ちょうど水の中に浮かぶように調節しておきます。
ここで、容器を外からつぶすと(ゴム膜を押すと)、水の中に新たに圧力が発生します。「液体に加えられた圧力は、液体内のいたるところに等しい大きさで伝わる」というのがパスカルの原理。そこで、小容器内の水面にも圧力が伝わり、その圧力によって空気の体積が小さくなり、押しのける水の体積も小さくなり、受ける浮力も小さくなるのに、容器の重さは変わらないので、差し引きで重さのほうが大きくなって浮沈子は沈むわけです。
左図で、圧力を加えずに、温度を変えたら(たとえば温度を上げたら)どうなるでしょう?
この設定で、容器内の水も空気も同じ温度まで上がった時、体積の膨張率は空気の方が大きいですから、小容器内の空気の体積増加の効果が大きく、浮力が増して浮いてくるでしょう。
音の旅は空気を通ってどのように
温度が上がるとガラス球が沈んでゆくガリレオ温度計とは、振る舞いが反対ですね。
●ではガリレオ温度計はどうなっているのでしょう?
中に入っているガラス球は密封されており、内部の空気が膨張・収縮しても内部で圧力が増大・減少するだけで、ガラス球としての体積増減はほとんどないと考えられます。
ガラス球+金属プレートが排除した液体の体積に等しい液体の重さと同じ大きさで上向きの浮力を受け、これが、ガラス球+金属プレートの重さとつりあっているのですが、ここで温度変化があるとどうなるのでしょう?
ガラス球の体積が変わらないとなると、温度の変化の影響が出るのは、液体の体積のほうです。
仮に温度が上がった場合で話を進めましょう。ガラス球は浮いていたものとします。
温度が上がったために、液体の体積が膨張しました。質量の変化がないのに体積が増加したのですから、質量/体積で表される液体の密度が小さくなります。すると、液体の中に浮いているガラス球が排除した液体の体積は変わっていないのに、液体の密度が小さくなると、排除した液体の重さが小さくなります。つまり浮力が減少したということです。
そのため、今まで浮いていたものが浮力の減少により、重さのほうが大きくなって沈んでいくわけです。
はい、温度が上がるとガラス球は沈む、ということになりましたね。
●ガリレオ温度計は液体中で上下しますが、熱気球は空気中で上下します。液体も気体も合わせて「流体」といいます。
普通、浮力に関して「アルキメデスの原理」というと、液体で話をしますが、実は、アルキメデスの原理はもっと広く「流体」中で成立するものなのです。
「流体中の物体は、それが排除した流体の重さに等しいだけの浮力をうける」ということになりますね。
●よく「熱せられて温度が高くなると軽くなって浮かぶ」という言い方をしますが、厳密には正しくありません。
物体の重さと、物体がうけている浮力が等しい時、物体はその流体中のどこでも浮いていられます。ところが、もし物体が熱せられて膨張すると、質量に変化がないのに、膨張の結果として排除する体積が大きくなり、浮力が大きくなり浮かび上がっていきます。
周囲の流体に比べて、密度が小さくなると浮力がまさって浮いていくのです。
逆に、周囲の流体に比べて、密度が大きくなると重さがまさって沈んでいくのです。
ρ2>ρ1 の時、差>0となって沈みます。逆に、ρ2<ρ1 の時、差<0となって上昇します。
物体が軽くなったり重くなったりするのではなく、密度の変化が起きるのです。
●熱気球では、気球の中の空気の温度が上がって密度が小さくなり、上昇します。
ガリレオ温度計は、温度が上がると、周りの液体の密度が小さくなって、相対的にガラス球の密度が大きくなり、ガラス球は沈みます。
同じように「温度が上がる」といっても、動きが逆になるのはこういうわけです
●データのはっきりしている水を液体の例として考えて見ましょう。下のグラフは、理科年表2003 CD−ROMから水の密度の温度変化をグラフ化したものです。水では4℃で密度が最大になりますが、この温度は考える温度領域外、ということでさし当たっては考えません。
18℃で沈む球1、20℃で沈む球2、22℃で沈む球3を考えます。
温度が15℃くらいの時、水の密度はどの球よりも大きいので、球は全部浮いています。
温度が上がって18℃を超えると、「球1の密度>水の密度>球2や球3の密度」となって、球1は沈みますが、球2と球3は浮いたままです。
さらに温度が上がって20℃を超えると「球1や球2の密度>水の密度>球3の密度」となりますから、球1と球2は沈み、球3は浮いています。
温度が22℃を超えたときのことはもうお分かりですね。
★なぜ「ガリレオ温度計」というのでしょう?
温度計の発明者が誰なのかは、はっきりはわかりません。1600年ごろに発明されたのは多分確かでしょう。ガリレオも温度計の発明者として名を挙げられる一人ではあります。ただ、当時の文献の挿絵では、原理的に下図のような温度計しか出てきません。
上のガラス球内部の空気が気温によって膨張したり収縮すると、それによってガラス管内の水面の高さが変わる、ということで温度の変化を検出するものです。
"A History of the Thermometer and Its Uses In Meteorology" W. E. Knowles Middleton, The Johns Hopkins Press, 1966
という本によると、下の図が、初めて出版物に現れた「Thermoscope」だそうです。Thermometer とは言っていませんね。温度の様子がわかる道具ですが、目盛りをつけて温度を測る道具ではないからです。1617年のGiuseppe Biancani の「Sphaera mundi」という本に載っているそうです。
光暖かい肌をinfaredない理由
イタリアのサントリオ・サントロ(Santorio Santorre)というお医者さんは、これを体温計にして、上のガラス球を口にくわえられる大きさにして、体温を測ったということです。1630年頃のことと思われます。
17世紀にイタリアで作られた「アカデミア・デル・チメント(Accademia del Cimento, 実験のアカデミー)」という学会がありました。
アカデミア・デル・チメントが1666年に出版した「Saggi di naturali esperienze fatte nell' Academia del cimento」は、1731年にラテン語に翻訳され、18世紀の標準的な科学の手引き書となったものです。下はその表紙です。
国立科学博物館のホームページから引用しました。
この表紙の右下のローマ数字が発行の年なのではないかと思うのですが「MDCLXVII」となっているようです。これは「1667」年だと思うのですが、詳しいことはよくわかりません。
さて、この本の挿画にこんなエッチングがあるのです。
これは、現在、通称「ガリレオ温度計」として売られているものと、同じもののようですね。
上に引用した"A History of the Thermometer and Its Uses In Meteorology"という本によると、
「液体(『ワインの精(spirit of wine)』=エタノール)の入ったガラス管の中に、質量・体積比(密度(おじさん註))の異なるガラス球が何個か入っている。温度が非常に低く、それに従って液体の密度が大きいと、ガラス球はすべて浮く。しかし、温度が上昇するとガラス球は次々と沈んでいく。そのため、液体の温度は沈んだ球の個数から推定できる。」
まったく、ガリレオ温度計そのものですね。
問題はこれを誰がいつ作ったかなのですが、1641年までには作られていたようだ、ということは確かなようです。
トスカーナ大公フェルディナンド2世がこれを所有していたようです。製作者は誰なのでしょう?
ガリレオが作ったというわけではなさそうです。
でも、ガリレオがこのような装置を見たことがあるというのも確かなようです。ガリレオの1638年の著書「新科学対話」に、そういう装置のことがチラッと述べられています。おじさん所有の岩波文庫版から紹介しましょう。
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ガリレオ・ガリレイ「新科学対話」(上) 今野武雄、日田節次 訳
昭和12年12月15日 第 1刷発行:昭和47年 5月30日 第21刷発行:岩波文庫 青126 岩波書店
105ページ〜107ページにかけて引用。
文中、サグレドはヴェネチア市民、サルヴィアチは新しい科学者、シンプリチオはアリストテレス哲学に通じた学者と設定されています。
対話は4日間にわたって行われますが、引用部分は第1日の中にあります。
[引用]
サグレド:私はしばしば封蝋の球に砂粒を入れ、これが遂には水と同じ比重になって、この媒体中で静止するようにと、できるだけ骨折ってみたことがありますが、どんなに注意してやってみてもどうしてもできませんでした。実際のところ、私は比重が元来水に非常に近く、水中のどこに置いても静止しているような固体があるかどうか知らないのです。
サルヴィアチ:この点にかけても人間は、他の幾多の仕事におけると同様に動物に負けています。貴方のこの問題でも、人間は魚から学ぶべきところが多々あるのです。魚は一種類の水の中だけでなく、その元来の性質のためまたは何か偶然の濁りあるいは鹹度(かんど。塩分濃度のこと)−−−そのいずれもかなりの差異を生ずるのですが−−−のために著しく性質が異なっている色々な水の中でも極めて巧みに釣合を保ちます。実際、魚はどこにでも動かずにじっとしていられるほど完全に釣合を保てるのですが、私は魚は自然が特に備え付けてくれた仕掛け、すなわち浮嚢(浮袋のこと)によってそれを果たすのだと信じています。この浮嚢は身体の中にあって細い管で口に通じており、魚はこの管を通じて、意のま� ��に浮嚢内の空気の一部を排出したり、また表面に浮かび出てもっと多くの空気を吸い込んだりして思い通りに自分の身体を水より重く、あるいは軽くして、釣合を保つのです。
" NPK "はどのようにそれがGCSE化学行われる
サグレド:それとはちがった別な仕掛で、私はかつて友人たちを欺し、水の中で釣合を保つ封蝋の球ができたと威張ったことがありました。それは容器の中に幾らかの塩水を入れ、その上に真水を入れ、そうしてから私は彼らに球が水の真中に止まっているのを見せ、また底に押し下げても、表面に引き上げてもそのいずれにも止まろうとせず真中に戻るのを見せたのです。
サルヴィアチ:その実験は詰まらないものではありません。というのは、物理学者が水の色々な性質、ことにその比重を試験する時、ある種の水の中では浮かびもしなければ沈みもしないように調節された、こういう種類の球を使うのです。で他の種の水を試験する場合、比重がわずかに相違していても球はこの水が軽ければ沈みますし、重ければ浮かびます。そしてこの実験は非常に正確で、穀粒二つ程の塩を6ポンドの水に入れても、球をその沈んでいた底から表面まで浮かび上がらすのに十分なのです。私はこれに付け加えて何か水より重い物質を溶かすことによってのみでなく、ただ水を熱したり冷ましたりしても、著しい比重の相違が起こり得るということをお話したいのです。そうすれば、上の実験の正確� ��も証明されますし、そのうえ水の、少しも抵抗せずに分割されるという性質まで証明されるでしょう。水はこの熱の作用に非常に敏感で、6ポンドの水に、それよりほんのわずか温かいか、または冷たい水を4滴たらしただけでも、球を浮き上がらせたり、沈ませたりすることができます。すなわち球は温かい水が注がれれば沈むし、冷たい水が入れば浮かぶのです。
・・・
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いかがでしょうか?水温の変化で球が浮き沈みする装置をガリレオは知っていました。
ですが、おそらく「ガリレオ温度計」の発明者ではありません。
ネット上の商品説明の中には必ずといって良いほど下のような文に出会います。
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●「ガリレオ・ガリレイ(1564〜1642)の発見した原理(比重測定原理)に基づいた温度計」
●「『液体の密度(比重)が温度によって変化する』というガリレオ温度計の科学原理」
●「この温度計が名称をガリレオ温度計と言われるのは『液体の密度(比重)が温度によって変化する』という原理(比重測定原理)を利用しているという事でこの名前がついたと考えられています。」
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でもねぇ、長らく理科教師をやってきて「比重測定原理」などというものにはお目にかかったことはありません。「液体の密度(比重)が温度によって変化する」というのは、単なる事実です。普通の物体は温度が上がると膨張するという事実です。「原理」などという名前を冠するような代物ではありません。その事実を色々利用することは可能ですが、それを根本法則として、何かずらずら〜〜っといろいろな法則が導かれてくるようなものではありません。
こんな文章もありました。
●「ガリレオ温度計の原理(比重測定原理)は熱膨張の原理を利用しています。」
だそうです。原理から原理が導かれ、「原理」だらけですねぇ。分かる分からない関係なしに、なんでもかんでも「原理」といえば、「はは〜っ」と平伏してしまうだろう、という魂胆丸見えですね。
原理というものは、根本のところにあって、そこからいろいろな法則や現象の説明が導き出されてくるもののことです。そう簡単に、原理から原理を導かないでほしいですね。
「ガリレオ温度計」というネーミングは、おそらく、商売上の「こけおどし」(きついかな。虎の威を借る狐、とどっちがきついでしょう?)ですね。「ガリレオ」という、理科に縁の遠かった人でも多くの人が知っているビッグネームを出して、その人が見つけた「原理だ!」といえば、みんな感心・納得してしまうだろう、ということでしょう。
★ガリレオが実際に比重・密度に関して述べたのは、上に引用した「新科学対話」の一節と、
1586年22歳の時に書いた「LA BILANCETTA」(「小天秤」と訳されています)という論文でしょう。
この中で、ガリレオは浮力と天秤とを利用して物体の比重を精密に測定する方法を説明しています。
ガリレオがこの小論文を書く動機となったアルキメデスの逸話を紹介しておきます。
「シラクサの王ヘロンが、金の王冠を作ることを思い立ちました。金細工師を呼んで金塊を渡し、王冠は立派に出来上がりました。しかしその後、この細工師について芳しくない噂が広まりました。『混ぜ物をして王冠を作り、預かった金塊の一部を盗んで私服を肥やしたそうだ』という噂です。
そこで王は、アルキメデスを呼んで、王冠を傷つけることなく、混ぜ物がしてないかどうか調べるように命じました。その方法を考えていたアルキメデスは、ある日、風呂に入ったところ、水が湯船からあふれるのを見た瞬間、王冠の純度を調べる方法がひらめきました。(このとき喜びの余り、裸のままで、
「ユウレカ、ユウレカ(見つけた、見つけた)」と叫びながら、街を走った、というのも有名な逸話です)。
アルキメデスは、王が金細工師に渡したのと同じ重量の金塊を用意し、金塊と王冠のそれぞれを、水を張った容器に入れました。すると、王冠を入れたときの方が、金塊を入れたときよりも多くの水があふれたそうです。素材も重量も同じであれば、体積も同じはずだ、銀を混ぜたために比重が小さくなり、重さは同じだが体積が大きくなったのだ、つまり、王冠には混ぜ物がしてあると結論したのです」。
ガリレオは、「神のごとき人」であるアルキメデスが、「水があふれる」などという大雑把なやり方をしたとは考えられない、アルキメデスはもっと精密な方法を考案したに違いない、として精密な比重測定法を述べたのです。それがこの「小天秤」という短い論文です。
この「小天秤」とそこに述べられている方法は、ページを改めて解説したいと思います。
「小天秤」で、ガリレオが比重(密度)測定について述べていることは確かですが、それは固体の密度についてであり、また温度変化による密度変化には一切触れていない、ということをここでは指摘するにとどめます。
つまり、「小天秤」でガリレオが述べた比重測定法は、いわゆる「ガリレオ温度計」とは関係がない、といっていいでしょう。
★結論
長くなりました。いろいろ巡りめぐった結果は、単純な結論です。
ガリレオは「ガリレオ温度計」の発明とは無関係である
ということです。
商売上の理由でしょうね、おそらく。ガリレオというビッグネームを使って、もっともらしく宣伝しているのだと思います。
そうはいっても、この「ガリレオ温度計」という装置自体の面白さは全く減じません。眺めていると楽しいですよ。色もきれいだし、理屈はわかってはいても、やっぱり浮き沈みが起きるのは不思議です。
ガリレオさんが発明したわけでもないし、「ガリレオの比重測定原理」などというものもないけれど、ガリレオさんがこのような装置を見て知っていたことは確かそうですから、「あのガリレオさんも見た温度計」というように想像力を働かせて楽しむのは素敵なことです。
というわけで、ガリレオさんとはほとんど無関係な「ガリレオ温度計」ですが、これを見かけて、予算内であったなら、買って楽しんで下さい。そのときに、こんないちゃもんつけて楽しんでいたおじさんもいる、ということだけ頭の片隅に引っ掛けておいていただければ幸いです。
最後にこの商品の箱の側面の説明文そのものも紹介しておきます。
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Galileo thermometer
Manufactutred after the idea of Galileo Galilei(1564-1642)
History
Searching for exact temperature maeasurements, Galileo discovered this fascinating method. Galilei put 4-5 exactly weighted balls in a cylinder filled with a special liquid. The balls go up or down according to the existing temperature. By this method you can determine the correct temperature.
Temperature indication
In liquid, a solid body with the same weight and size is compelled to go down as the temperature rises. On the ather hand the solid body goes up in in the liquid if the temperature falls. The glass balls differ in weight and considering density of the liquid you are guarateed that the lowest of the floating balls in the upper part of the cylinder indicates the right temperature.
Manufacture
The production of this instrument is extremly complicated and only able through handwork. Each ball is calibrated to exactly 1 ℃. Two glass balls differ in weight by only 6/100 gram. Because of its accuracy and exclusiveness we are convinced that you will not regret having bought this instrument. The liquid in the cylinder is free of CF2 gases, neither poisonous nor does it cause any vapor or gas injurious to health. In order that the Galileo thermometer gives pleasure to yo for a long time avoid continuous son shine.
Height: 280mm +- 10
Diameter: 36mm +- 2
Measuring range: 18-26℃(64-80F)
Graduation: 2℃(4F)
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やっぱり、ガリレオが発明したと、もっともらしく書いてありますね。この装置に「ガリレオ温度計」という名前をつけたのはどこの誰だったのでしょう?
事実とは違うけれど、ネーミングとしては大成功だった、と認めざるを得ませんね。また、ネーミングとは無関係に、液体の密度変化で浮き沈みするようにガラス球の密度を、多分金属製のタグで調整するのはすごい技であることは認めざるを得ません。そんなところも十分鑑賞したいと思います。
蛇足:華氏温度をF、摂氏温度をCとすると、F=1.8C+32の関係があります。2℃の変化は厳密に言うと3.6Fの変化ですね。
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